ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア

Rubens; Inspired by Italy and Established in Antwerp

Bunkamura ザ・ミュージアム

20130309-20130421

 

常設展を開催しました。こちらからどうぞ。 [2013.5.25 up]

2013年3月15日(土) 晴 11時40分~12時30分頃


【総評】

 

 平日のお昼頃でしたが、流石に混んでいました。Bunkamuraに入った所では「余り人がいないなぁ」と思っていたのですが、エスカレータを降りた所から混み始めました。

 

 同日に「ラファエロ」展も観てきましたが、何故か「ラファエロ」展も「ルーベンス」展も一番最初の作品が「自画像」。展覧会名に個人名を使用しているからだと思いますが2展続くとちょっと笑みが……。

 

 ギリシア神話関連ですが、以下の14点がありました。

 

01.ペーテル・パウル・ルーベンス 「ロムルスとレムスの発見」

02.ペーテル・パウル・ルーベンス 「三美神」

03.17世紀フランドルの画家 「レウキッポスの娘たちの略奪」

04.ペーテル・パウル・ルーベンス 「ヘクトルを打ち倒すアキレス」

05.ペーテル・パウル・ルーベンス 「プシュケと眠るクピド」

06.ペーテル・パウル・ルーベンス 「ディアナとエンデュミオン」

07.ペーテル・パウル・ルーベンス 「アポロとダフネ」

08.ペーテル・パウル・ルーベンス 「パンとシュリンクス」

09.ペーテル・パウル・ルーベンス 「グラウコスとスキュラ」

10.ペーテル・パウル・ルーベンス 「ヘラクレスの犬による紫の発見」

11.クリストッフェル・イェーヘル(ルーベンス原画) 「酔っ払ったシレノス」

12.ヤン・ブックホルスト 「アポロとピュトン」

13.ペーテル・パウル・ルーベンス 「シルウィアの鹿の死」

14.ヤーコブ・ヨルダーンス(工房) 「豊穣の寓意」

 

 ギリシア神話関連「っぽい」のが4点。

 

・コルネーリス・ハッレ(父)(ルーベンス原画) 「ヤン・ファン・ムルスの出版商標」

・ペーテル・パウル・ルーベンス 「ヤン・ファン・ムルスの出版商標」

・ペーテル・パウル・ルーベンス 「毛皮をまとった婦人像(ティツィアーノ作品の模写)」

・パウルス・ポンティウス(エラスムス・クエリヌス2世原画) 「ルーベンスとヴァン・ダイク」

 

 美術展的にも今回のメインの一つである「ロムルスとレムスの発見」がギリシア神話関連の最初の絵画で、その後直ぐに2つの壁を使って上記03~10の8点が並んでいて「ギリシア神話コーナー(と言う訳ではないのでしょうが……)」が作られていました。

 

 「ロムルスとレムスの発見」はローマ建国絡みの話です。絵画には「牝狼、啄木鳥」が描かれています。オウィディウス著「祭暦」の第三巻、マルス月を見てみると、

 

 そこに一本の木がありました。その跡はまだ残っています。いまルミナの無花果と呼ばれている木がかつてはロムルスの無花果であったのです。捨てられた双子のいるそこへ、不思議にも、産後間もない牝狼がやって来ました。獣が子供たちを傷つけなかったとだれが信じられるでしょう。傷つけないばかりではありません。助けもします。血を分けた者が殺そうと手を下した彼らに牝狼が乳をやるのです。狼は立ち止まると、尻尾で幼い養い子らを愛撫します。二人の体の形を整えるように舌でなめるのです。二人の様子はマルス神の子とわかるに十分でした。恐れ気もなく、乳首に吸いつきます。自分たちが貰うはずでなかった乳のおかげで育っていくのでした。この牝狼(ルパ)がその場所の名のもととなり、さらに、その場所がルペルキの名のもとになりました。乳母は授乳により大きな褒美をうけているのです(p76抜粋)。

 

 マルスの鳥なる啄木鳥(きつつき)と牝狼が双子の木を守って戦い、そのおかげで、どちらの棕櫚も無事であった(p99抜粋)。

 

 幼子らが獣の乳で大きくなったことを、捨てられた子らに啄木鳥が何度も食べ物を運んだことをだれが知らないでしょう(p100抜粋)。

 

 牝狼の授乳は他の作品もあり、話的にも有名ですが、啄木鳥の話は私も忘れていました。「祭暦」の訳注には「啄木鳥と狼はマルス神の聖獣」とありました。なるほどそれで啄木鳥なんですね。

 

 今回の個人的メインは「ヘクトルを打ち倒すアキレス」。ギリシア神話の絵画は沢山ありますが、意外と「トロイア戦争」関連の絵画は少ない気がします。美術史は良く分かりませんが、ルネッサンス・バロック時代のギリシア神話の絵画はやはりオウィディウス「変身譚」がベースだからですかね……。

 

 左側にギリシア軍最強の英雄・アキレス、右側にトロイア軍最強の英雄・ヘクトル、そして、その上にはギリシア・アテネの守護神・アテナ女神。アテナ女神はアキレスに顔を向け「やっておしまい」的な感じで指を指しています。

 

 恐らく構図的な問題なのでしょうけど、二人共、武器を「左手」に持っています。西洋絵画は左側から右側に観るらしいので、左手の方がサマになるような気がしています。

 

 今回、ちょっと珍しいなと思ったのが「ヘラクレスの犬による紫の発見」。何かで読んだ様な気もしますが、図録には、

 

 2世紀に活躍したギリシャの修辞家ユリウス・ポルクスの『名前の書』(I:47)には、如何にして、ヘラクレスの犬が、紫の染料を見つけたかについて述べている。すなわち、テュロスの海岸をヘラクレスが犬を連れて歩いていたとき、その犬がホネ貝に噛みつき、その舌は紫に染まった。こうしてテュロスの有名な紫の染料が発見されたのである(p86抜粋)。

 

 とあります。「Onomasticon Julius Pollux purple」で検索すると英文Wiki等で見つかるようです。ここに書かれている「テュロスの有名な紫の染料」というのはとても高価な物だったらしく、オウィディウス著「祭暦」のアリオン(竪琴の名手)の物語に、

 

 彼が、テュロスの紫貝で二度染めした外衣(32)をまとうと(p62抜粋)、

 

 とあり、この訳注に、

 

 (32) 深紅と紫を合わせて染めたもので、特別な価値があった(p277抜粋)。

 

 とありました。高価で有名らしいです^^;

 

 ヤン・ブックホルストさん「アポロとピュトン」はアポロが「地球のへそ」と呼ばれるデルポイを守っているピュトンと呼ばれる大蛇(竜っぽい)を退治し終わって、愛の神クピド(エロース)と話しているシーンです。絵画素人の自分には「ドラクロワ」っぽく見えて印象に残りました。

 

 物語的には、オウィディウス著「変身物語(上)」の対応箇所を見ると、

 

 最近大蛇を退治したことで思いあがっているアポロンが、弓弦(ゆんずる)を引きしぼっているクピードを見て、こう言った。

 「いたずら好きの坊やさん、きみはその強力な武器をどうしようというのだ? それを肩にかけるのは、このわたしにこそふさわしい。<略>」

 ウェヌスの息子クピードは、彼に答える。「<略>すべての生き物が神に及ばないのと同じくらい、あなたのほまれはぼくのほまれにかないっこありません」(p32抜粋)

 

 再度、図録を見ると、

 

 すなわち、偉大なる勝利の余韻に酔いしれていたアポロは、小さなクピドが弓矢を射ることを小馬鹿にしたために、クピドの怒りを買い、彼の矢を受けて、ダフネに対する報われない愛に苦しむことになるのである(p148抜粋)。

 

 この「ダフネに対する報われない愛」は上記07.ペーテル・パウル・ルーベンスさん「アポロとダフネ」に描かれていますので、展示順に絵画を観ていくと物語の順番とは逆になるようです。

 

 パウルス・ポンティウスさん「ルーベンスとヴァン・ダイク」は「師匠と弟子」の肖像画なのですが、ミネルワ(アテナ女神)とメリクリウス(ヘルメス神)が描かれています。何でだろうと思い、図録を見てみると、

 

 2人の職業は、画面中央上下のモティーフによって示される。すなわち、上部には、渦巻き装飾の上に、メリクリウスとミネルワの頭部からなるヘルマテナと呼ばれる、諸芸術と諸学問を象徴するイメージが見える。メリクリウスの前には、幸運と成功を約束するカドゥケウスと呼ばれる杖が、また、ミネルワの前には実を付けたオリーヴの枝が表されている。オリーヴの枝は、平和と勝利を象徴するとともに、その実が2年に1度しかならないことから節制を意味するともされた(p120抜粋)。

 

 とありました。う~ん、ミネルワとメリクリウスなんですね……また別の作品ですが、ペーテル・パウル・ルーベンスさん「ヤン・ファン・ムルスの出版商標」にもミネルワ(アテナ女神)とメリクリウス(ヘルメス神)が描かれていました。

 

 アテナ女神はコリントの兜を被り、近くにはアトリビュートの梟がいます。ヘルメス神はペタソス(飛行帽子)を被り、アトリビュートの「ケーリュケイオン(カドゥケウス)の杖」が近くにあり、雄鶏がいます。雄鶏は珍しいなと思い、カルターリ著「西欧古代神話図像大鑑」のメリクリウスの章を見ると、

 

 商売には懈怠ない用心が必要であることから、人々はこの神の傍らに雄鶏を置いて見せた(p398抜粋)

 

 との事でヘルメス神のアトリビュートの一つのようです。図録には「フクロウと雄鶏は、それぞれ夜と昼を象徴している(p158抜粋)。」とありました。なるほど「アテナ女神とヘルメス神」で「昼と夜」を示すと言うのは面白いですね。

 

 ギリシア神話関連が多く、グッズも少なくはなかったので、満足度は高いです。今年前半の目玉の一つだと思います。

【購入グッズ】


図録 \2400

 

ポストカード

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「ロムルスとレムスの発見」 \150

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「ヘクトルを打ち倒すアキレス」 \150

 パウルス・ポンティウス(エラスムス・クエリヌス2世原画) 「ルーベンスとヴァン・ダイク」 \150

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「毛皮をまとった婦人像(ティツィアーノ作品の模写)」 \150

 ペーテル・パウル・ルーベンス(工房) 「自画像」 \150

 ヤン・ウィルデンスとフランス・ワウテルス 「牧人のいる風景(部分)」 \150

 

しおりセット

 自画像など \500

 

フレーム付フォトカード

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「ロムルスとレムスの発見」 \1200

 

クリアファイル(A4)

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「ロムルスとレムスの発見」 \400

 

3パーツホルダー(A5)

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「ロムルスとレムスの発見」 \500

 

額絵

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「ロムルスとレムスの発見」 \500

クレジットカードは利用可能です。


 小さいながら額絵がありました。「フレーム付フォトカード」は見栄えが良いので購入しましたが、絵の下の部分は大分カットされています。正方形に近いのでまぁ仕方ないかなとは思いますが、ちょっと残念。

 

 後、図録が入るぐらいの袋が中々良い感じだったのですが\1600とちょっと高かった為に断念。パッケージがオリジナル(「ロムルスとレムスの発見」)のクッキーも気になりましたが、こちらも未購入。

【ギリシア神話の絵画とポストカード】

No 作者名 作品名 ポストカード
1 ペーテル・パウル・ルーベンス
ロムルスとレムスの発見
2 ペーテル・パウル・ルーベンス
三美神
 ×
3 17世紀フランドルの画家 レウキッポスの娘たちの略奪  ×
4 ペーテル・パウル・ルーベンス ヘクトルを打ち倒すアキレス
5 ペーテル・パウル・ルーベンス プシュケと眠るクピド  ×
6 ペーテル・パウル・ルーベンス ディアナとエンデュミオン  ×
7 ペーテル・パウル・ルーベンス アポロとダフネ  ×
8 ペーテル・パウル・ルーベンス パンとシュリンクス  ×
9 ペーテル・パウル・ルーベンス グラウコスとスキュラ  ×
10 ペーテル・パウル・ルーベンス ヘラクレスの犬による紫の発見  ×
11 クリストッフェル・イェーヘル(ルーベンス原画) 酔っ払ったシレノス  ×
12 ヤン・ブックホルスト アポロとピュトン  ×
13 ペーテル・パウル・ルーベンス シルウィアの鹿の死  ×
14 ヤーコブ・ヨルダーンス(工房) 豊穣の寓意  ×
15 コルネーリス・ハッレ(父)(ルーベンス原画) ヤン・ファン・ムルスの出版商標  ×
16 ペーテル・パウル・ルーベンス ヤン・ファン・ムルスの出版商標  ×
17 ペーテル・パウル・ルーベンス 毛皮をまとった婦人像(ティツィアーノ作品の模写)
18 パウルス・ポンティウス(エラスムス・クエリヌス2世原画) ルーベンスとヴァン・ダイク