マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展

The Real and the Imagined: Watercolours from The Whitworth Art Gallery

Bunkamura ザ・ミュージアム

20121020-20121209

 

常設展を開催しました。こちらからどうぞ。 [2012.3.6 up]

2012年10月20日(土) 晴 12時30分~13時15分頃


【総評】

 

 美術展初日でしかも秋晴れの土曜日でしたが、あまり混んではいませんでした。リヒテンシュタイン展などと比べると美術展的にちょっとインパクトが弱いかな、とは思っていましたが、予想より空いていました。


 ギリシア神話関連ですが、以下の3点がありました。

 

●サミュエル・パーマー 「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」

●エドワード・バーン・ジョーンズ 「ウェヌス・コンコルディア(和合のヴィーナス):≪トロイア物語≫のプレデッラのための習作」

●エドワード・バーン・ジョーンズ 「ウェヌス・ディスコルディア(不和のヴィーナス):≪トロイア物語≫のプレデッラのための習作」


 今回の個人的メインはサミュエル・パーマーさん「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」。カリュプソ様が左下にいてオデュッセウスを見送っています。中央には手を振り、太陽に向かって去り行くオデュッセウス。陽の光が綺麗です。

 

 最初観た時、この陽の光は「夕陽」に観えました。しかし「カリュプソの島」は(確か)西にあり東に向かって出航するというイメージがあったのと、出航するのは朝だろうという勝手な思い込みがありました。ところが、図録を見てみると「水平線には沈む夕陽を描いている。」とあり、更に、

 

 夕陽とその輝かしい光の効果をとりあげることの多いパーマーの完成作の典型でもある(p166抜粋)。

 

 とありました。まぁ確かにどう観ても夕陽なんですけどね……。岩波文庫・ホメロス著「オデュッセイア(上)」第五歌の対応部分を見てみると、

 

 四日目に入って、オデュッセウスの筏はすっかり出来上がった。五日目にはいよいよ美貌の仙女カリュプソが、彼を島から見送ることとなった。仙女は彼に風呂を使わせてから、香を焚き籠めた衣裳を着せ、黒々とした酒の皮袋、それにもう一つ、水を入れた大袋、さらに食糧を詰めた袋も筏に積み込み、味の良い副食物(おかず)もたっぷり添えた。仙女は暖かく穏やかに吹く順風を送り、オデュッセウスは順風に心楽しく帆を拡げた(p140抜粋)。

 

 とありました。う~ん、朝か夕かは書いてありません。場合によっては夜に出航した事もあったらしいので朝陽か夕陽かは限定できなさそうです。但し、訳注部分に、

 

 これらの星々はいずれも北天にあるから、これを左手に見てゆくとは、東へ向かうということになる。カリュプソの島は、世界の西端にあったわけである(p353抜粋)。

 

 とありました。オデュッセウスがこの後に着く「パイエケス人の国(某アニメで有名なナウシカア王女がいる国)」はイタリアのシチリア島辺りという説があり、オデュッセウスの故郷イタケは更に東に位置しますので帰還するには「東に向かって出航」というのは間違いないようです。

 

 とは言え「カリュプソの島」のどの位置から出航したかは分かりませんので、一旦、西に向かってからでないと東にいけない所だったのかもしれません。

 

 色々と考えさせてくれる絵画ですが、オデュッセウスを題材にした綺麗な絵画が観れて満足でした。

 

 この他のギリシア神話関連の絵画ですが「ラファエル前派の画家とラファエル前派主義」というコーナーがあり、ラファエル前派はギリシア神話の題材が多いですので、期待をしたのですが、残念ながら習作が2枚だけでした。

 

 2枚の習作はエドワード・バーン・ジョーンズさんの「ウェヌス・コンコルディア(和合のヴィーナス)」と「ウェヌス・ディスコルディア(不和のヴィーナス)」と共にヴィーナスを題材とした物でした。

 

 ふと「~のヴィーナス」で思い出したのが2003年「東京藝術大学大学美術館」で行われた「テイト・ブリテン発世界巡回展 ヴィクトリアン・ヌード 19世紀英国のモラルと芸術」展のダンテ・ゲイブリエル・ロセッティさんの「ヴェヌス・ヴェルティコルディア(心変わりを誘うヴィーナス)」

 

 ヴィーナスさん(和合の)(不和の)(心変わりを誘う)と流石に「愛の女神」様ですね……。

 

 ギリシア神話関連がもっとあるかと思いましたが、3点と少なく残念でした。ただ、個人的にはサミュエル・パーマーさん「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」だけで満足できました。

【購入グッズ】


図録 \2300

 

ポストカード

 サミュエル・パーマー 「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」 \150

 レジナルド・バラット 「日没時のスフィンクス、エジプト」 \150

 エドワード・バーン・ジョーンズ 「座る女性奏者、「哀歌」のための習作」 \150

 

ダブルファイル \600

 

マグネット

 サミュエル・パーマー 「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」 \600

 ギリシア神話関連は常設展で展示しています。

 マグネット。良い雰囲気です。

 レシート。ロゴ付きです。オリジナルで中々良いですが、リヒテンシュタイン展と比べるとちょっと地味です。

クレジットカードは利用可能です。


 グッズはちょっと種類が少ないように感じました(ポストカード自体は28点販売されていました)。最近、少し目にするようになった額絵もなかったです。ギリシア神話の絵画自体、少なかったですが、サミュエル・パーマーさん「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」はクリアファイルや額絵に向いていると思っていただけにかなり残念でした。

 同時期に開催している国立新美術館「リヒテンシュタイン展」のアドカードがありました。ちょっとユニークなアドカードで「マグネット」と「立体はがき(?)」の2種類。マグネットの方は人気があったのか、最後の一個でした(補充はされていると思います)。

 マグネットのアドカード。切り人はいるのでしょうか……。

 立体アドカード。組み立てると↓になります。

 美術展が再現されています。天井画もちゃんとあります。

【ギリシア神話の絵画とポストカード】

No 画家名 作品名 ポストカード
1 サミュエル・パーマー
カリュプソの島、オデュッセウスの船出
2 エドワード・バーン・ジョーンズ
ウェヌス・コンコルディア(和合のヴィーナス):≪トロイア物語≫のプレデッラのための習作
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3 エドワード・バーン・ジョーンズ ウェヌス・ディスコルディア(不和のヴィーナス):≪トロイア物語≫のプレデッラのための習作 ×