イタリア・ルネサンス-宮廷と都市の文化展

IL RINASCIMENTO IN ITALIA La Civilta delle Corti

国立西洋美術館

20010320-20010708

No:0002_0001

ヘラクレスとヒュドラ

Ercole e l'ldra(Hercules and the Hydra)

アントーニオ・デル・ポッライウオーロ(アントーニオ・ディ・ヤコポ・ベンチ)

板、テンペラ、17.5×12.0cm(tavola 17.5×12.0cm)

1475年頃(c.1475)

フィレンツェ、ウフィツィ美術館(Firenze Galleria degli Uffizi)

 この絵はアントニオが、メディチ宮のために描いた「ヘラクレスの功業」という大作三点のうちの一点をコピーしたもので小さい。それでも筋肉の描き方などはさすがに精確で、迫力がある(日本経済新聞 20050110 「龍の図象 十選 1」 夢枕獏 抜粋)。

 

No:0002_0002

フローラ(花の女神)

Flora

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

油彩、カンヴァス、79.7×63.5cm(tela 79.7×63.5cm)

1515年頃(c.1515)

フィレンツェ、ウフィツィ美術館(Firenze Galleria degli Uffizi)

 野バラは豊饒と調和を暗示し、花束を持つ手にはめた指輪は、結婚の約束を示している。両肩にかかる魅惑的な黄金の髪には青いリボンをあしらっており、未婚の若い女性だけがあらわにするのを許されていたように、髪は結わずに解きほぐされている(カタログp184抜粋)。

 

No:0002_0003

ウルカヌスの鍛冶場

Fucina di Vulcano

ジョルジョ・ヴァザーリ

油彩、錫、38.0×28.0cm(stagno 38.0×28.0cm)

1565年頃(c.1565)

フィレンツェ、ウフィツィ美術館(Firenze Galleria degli Uffizi)

 ミネルウァが片手にコンパスと分度器、もう一方の手に設計図を持って示しているのは「才能」と理論的「省察」であり、仕事中のウルカヌスが表現しているのは「実践」と、技術を意味する「技芸」である(カタログp226抜粋)。

 

No:0002_0004

黄金の時代

Eta dell'oro

ヤコボ・ズッキ

油彩、板、50.0×39.0cm(tavola 50.0×39.0cm)

1575年頃(c.1575)

フィレンツェ、ウフィツィ美術館(Firenze Galleria degli Uffizi)

 

 ギリシア神話では人類の歴史は「五つの時代」に分かれています。五つの時代の最初が黄金の時代です。この黄金の時代は、特に働く事なく食べ物は勝手に育ち、憂い、労苦、嘆きもなく、不死ではなかったが、不老で眠りにつくかのように死を迎える事が出来ました。

 

 美術展のカタログには、

 

 その構図からは、小川の両岸で自然の喜びに安穏にひたって、踊ったり、抱き合ったりしている人物たちの小集団をいくつか採用してはいる。しかし神話についての理解はいっそう深められており、この作品では、この図象の源泉と考えられるオウィディウスの『変身物語』とのより緊密な一致を見せている(カタログp227抜粋)。

 

 とあります。そこで、オウィディウス 著/中村善也 訳「変身物語(上)」(岩波文庫)を見てみると、

 

 乳の河が流れるかとおもえば、甘露(ネクタル)の流れが走り、青々としたひいらぎからは、黄金色の蜜がしたたってた(p16抜粋)。

 

 とあります。恐らくこの場面の事を記述していると思われます。にしても、河に立小便をしている子供はどうかと思いますけどね。いくら黄金時代とはいえ……。後、カタログにはこの黄金時代と対になる「銀の時代」の絵画もあるそうで、個人的には銀の方が見てみたいですね。

 

詳しくは→ 【絵画の中のギリシア神話】 五つの時代の話

No:0002_0005

イカロス

Icaro

フランチャビージョに帰属

油彩、板、31.0×24.5cm(tavola 31.0×24.5cm)

1507-1508年頃(c.1507-1508)

フィレンツェ、パラッツォ・ダヴァンツァーティ美術館(Firenze Museo di Palazzo Davanzati)


 イカロスは名工ダイダロスの息子で、ダイダロスがクレタ島のミノス王を裏切った為、迷宮に閉じ込められますが、蝋と羽で翼を作り親子で脱出をします。イカロスは空を飛べたことを喜び、高く飛びすぎた為、太陽の熱で蝋が溶けて墜落し、命を落としてしまいます。

 

 美術展のカタログには、

 

 左側では、父親のダイダロスがイカロスの腕をつかみ、まるで彼を引き留めるか、もしくはしっかりと立てるように手助けしようとしている。神話によれば、ダイダロスは息子に、あまり高く上がりすぎないように、また人間に課された諸限界を尊重するように警告する。右側の女性は、おそらく、父子がクレタ島から逃亡できるように取り計らったパシファエで、両翼をイカロスの両肩に固定するのを手助けしているように見える(カタログp167抜粋)。

 

 とあります。高く飛べば太陽で蝋が溶け、低く飛べば海の湿気で羽が重くなる、この為、中間を飛びなさい、とイカロスに忠告しています。

 

 この話に似ている話が「太陽の馬車を走らせるパエトーン」にもあり、トマス・ブルフィンチさんの「完訳 ギリシア・ローマ神話」のp88に「中道がいちばん安全で、よい道なのだ。」と太陽神アポロンが息子のパエトーンに忠告しています(結局、イカロスと同じく命を落とします)。

 

 神ならざる人間は、上でも下でもなくバランスの良い真中を生きていきなさい、という教訓なのでしょうかね……。

 

詳しくは→ 【絵画の中のギリシア神話】 イカロスの話

No:0002_0006

「パルナッソス山」を表した杯

Coppa con il Parnaso

ファエンツァ窯 ピエトロ・ベルガンティーニの工房

マヨリカ、直径25.6cm 高さ3.8cm(Maiolica,diam. cm. 25.6, alt. cm. 3.8)

1531年(1531)

ファエンツァ、国際陶器美術館(Faenza Museo Internazionale delle Ceramiche)

 この作品の際立った優美な構図は、ヴァティカン宮殿の「署名の間」にラファエッロが描いた、アポロとムーサたちが憩うギリシアの有名な聖なる山を、マルカントニオ・ライモンディが版画化した《パルナッソス山》の模写をもとにしたことを示唆している(カタログp166抜粋)。