ドレスデン国立美術館展[世界の鏡]

Dresden-Spiegel der Welt. Die Staatlichen Kunstsammlungen Dresden in Japan

国立西洋美術館

20050628-20050919

No:0010_0001

ガニュメデスの誘拐

Rape of Ganymede

レンブラント・ハルメンス・ファン・レイン

油彩・カンヴァス、177×130cm(Oil on Canvas 177×130cm)

1635年(1635)

ドレスデン国立美術館(Staatliche Kunstsammlungen Dresden)

【絵画の中のギリシア神話】 ガニュメデスの話

 ガニュメデスは「人間の中で最も美しい少年」であった為、鷲に変身した大神ゼウスまたはゼウスの使いの鷲が天上にさらっていき、それまで天上の饗宴で神々に神酒を注いでいた「女神ヘベ」にかわり、その役を務めるようなった元・トロイアの少年です(天上では不老不死となりました)。

 

 ガニュメデスの父親はトロイアのトロスまたはその孫のラオメドンと言われていますが、天上にさらっていかれた代償として黄金の葡萄と「神速な馬」を貰い受けています。

 

 この絵画は青字部分を描いた物と思います。美術展のサイトには、

 

 今回の日本展のために最近完了した修復によって、これまで古い上塗りとニスの層で隠されていた部分が再び日の目を見ることになりました。それは、画面左下に描かれた建物のアーチ開口部の前で両手を挙げる女性の半身像でした(http://www.nikkei-events.jp/dresden/works/works6.html より抜粋)。

 

 とあります。ついつい鷲とガニュメデスに目がいきますが、左下を良~く見ると確かに両手を広げた女性らしき姿が描かれています。恐らくガニュメデスの母親だと思われますが、残念な事に母親の話は残っていないようです(もしこれが男性であれば、トロスまたはラオメドンなのかなぁと、違った視点で見ることができたかも)。

 

 話は飛びますが、有名なトロイア戦争の折、大神ゼウスはギリシア側ではなくトロイア側を贔屓していました。女神テティスに懇願されたから、寵愛するサルペドンがトロイア側だったから、と理由はいくつかありそうですが、個人的には「傍にガニュメデスがいたから」だったのかな、と思っています。

 

 ホメロス 著/松平千秋 訳 「イリアス(上)」(岩波文庫)の第五歌 ディオメデス奮戦す(九〇九行)に、

 

 この馬はな、その昔遥かに見晴らすゼウスがトロスに、その子ガニュメデスを奪った償いとして賜わった、曙の照らす限り陽の輝く限りのいずこを求めても、これほどの逸物はないという名馬の種なのだ(p151抜粋)。

 

 とありますので、既にガニュメデスは天上にいて、ゼウスにお酌をしてまわっていた筈です。前にその役を行っていた女神ヘベは、女神ヘラの戦車の準備をしたり、兄の軍神アレスに湯浴みをさせたり、お酌以外の事を行っています。

 

 ゼウスの傍にいて甲斐甲斐しく(?)お酌をしてまわるガニュメデスの故郷であり、しかも「これほどの逸物はないという名馬」をトロイアに授けているのに、あっさりとトロイアを滅亡させては「流石にちょっとなぁ」と思っても不思議はなさそうですよね?

(まぁ勝手な妄想ですので、読み飛ばして下さい……)