絵画の中のギリシア神話

第004話 五つの時代の話 

 ギリシア神話では人類の歴史は「五つの時代」に分かれています。ちょっと先走りますが今、私達は五つの時代の最後「鉄の時代」を過ごしています。この鉄の時代、個人的には結構良い時代だと思っていますが、ギリシア神話ではそうでもないようです。五つの時代とは、

 

①黄金時代

 特に働く事なく食べ物は勝手に育ち、憂い、労苦、嘆きもなく、不死ではなかったが、不老で眠りにつくかのように死を迎えた。そして死後は生ある者の守護者となり、五つの時代の中で最も幸せな時代と言えます。なお、この時代は大神ゼウスではなく、父親のクロノスが治めていた時代になります。

 

②白銀時代

 黄金の種族とは姿も心も似ても似つかぬ種族で百年の間、子供のままで過ごし、成人するとすぐに死ぬ種族でした。無分別で神を崇めようとしなかった為、大神ゼウスにより滅ぼされてしまいました(女家長時代っぽかったらしいです)。

 

③青銅時代

 白銀の種族とは更に似ていなく「とねりこ」の木から生まれ、戦好きの種族でした。穀物すら口にせず、その心は鋼のごとく硬く苛酷で力は強靭、武器も住む家も青銅製、という種族でした(青銅フェチ?)。この種族はお互いに殺し合うことで滅びました。なお「とねりこ」とは木の種類で当時、槍の柄の部分に使用されていたようです。

 

④英雄時代

 五つの時代で唯一、先代より良くなった時代です。この時代に「テバイ戦争」や「トロイア戦争」などがあり、半神半人の英雄が活躍した時代です。この時代は青銅時代に属している為に5時代ではなく4時代とする場合もあります。

 

⑤鉄の時代

 今の時代です。ゼウスが作られた種族で豊饒の大地に住む人間になります。まぁ、今と言ってもヘシオドスやホメロスの時代ですので今から3000年ぐらい前の時代ですが……。

 

 になります。名前の通りに時代を下るに従い退廃していきます(唯一、英雄時代を除いて)。ヘーシオドス 著/松平千秋 訳「仕事と日」(岩波文庫)の「五時代の説話」には、

 

 かくなればわしはもう、第五の種族とともに生きたくはない、

 むしろその前に死ぬか、その後に生まれたい。

 今の世はすなわち鉄の種族の代なのじゃ(p32抜粋)。

 

 とあります。う~ん今の時代、そこまで悪いですかね。まぁ確かに「昼も夜も労役と苦悩に苛まれ」というのは当っていますね。

 なお、人類の起源というとプロメテウスが土と水で創造した、というのが思い起こされますが、パウサニアス 著/飯尾都人 訳「ギリシア記」(龍溪書舎)の「人肌の石」には、

 

 市の峡谷に臨んで石が二箇横たわり、どちらも車に積めるくらいの大きさである。石の色は陶土色、それも土でなく谷川や砂まじりの急流(の川底)に見られるような色をしている。さらに、石は人肌そっくりといえそうな臭いを出している。これはプロメテウスが全人類を造りあげた際に材料とした陶土の残りだ、という(p666抜粋)。

 

 とありました。因みにこの場所はデルポイから直線で東に約30kmぐらいのパノペウスという所のようです。ここで人間が作られたんですかね。