ラファエロ

Raffaello

国立西洋美術館

20130302-20130602

 

常設展を開催しました。こちらからどうぞ。 [2013.5.18 up]

2013年3月15日(金) 晴 10時15分~10時45分頃

 

【総評】

 

 平日の昼前でしたが、予想通り混んでいました。ただ「激混み」という訳ではなく「ちょっと混んでいるかなぁ」ぐらいでした。少し意外だったのですが、同日に梯子したBunkamura ザ・ミュージアムの「ルーベンス」展の方が混んでいました。

 

 ギリシア神話関連ですが、以下の11点がありました。

 

ラファエロの工房 「プットーとグリフォンを表したフリーズ」

マルカントニオ・ライモンディ 「壁龕のアポロ」

マルカントニオ・ライモンディ 「パルナッソス山上のアポロ」

ラファエロ・サンツィオ 「ムーサの頭部」

マルコ・デンテ 「バラの棘を抜くヴィーナス」

マルカントニオ・ライモンディ 「パリスの審判」

マルカントニオ・ライモンディ 「クォス・エゴ(波を鎮めるネプトゥヌス)」

マルカントニオ・ライモンディ 「三美神にプシュケを示すアモル」

マルコ・デンテ 「ガラテイアの凱旋」

ジョヴァンニ・ダ・カステルボロニェーズ 「アポロとマルシュアス」

マルコ・デンテ 「≪ガラテイアの凱旋≫の描かれた水盤」


 今回の個人的メインはマルカントニオ・ライモンディさん「パリスの審判」。行く前はマルコ・デンテさん「ガラテイアの凱旋」ぐらいしかないと思っていたのですが、意外にギリシア神話がバラエティに富んでいて嬉しい誤算でした。

 

 このマルカントニオ・ライモンディさん「パリスの審判」は、

 

 この名高い版画は、ラファエロの構想に基づき制作された。下絵素描は消失したが、部分的な習作が知られており、これらは疑わしくも大抵はラファエロに帰属され、時に別な作品にも結びつけられる(カタログp140抜粋)。

 

 とのことで、右下の三人(三柱)の構図は、有名なエドゥアール・マネ≪草上の食事≫で引用されたものだそうです(カタログp34に記述)。

 

 左下にリンゴを渡すパリス、受け取っているアフロディテ女神(エロス)、その右隣にはアテナ女神(兜)、アフロディテ女神の左隣にはヘラ女神(孔雀)で更に隣にヘルメース神(ケーリュケイオンの杖とペタソス)。

 右上にはアルテミス女神(月)、ゼウス大神(雷と鷲)、画面中央の上にはアポロン神(太陽)、その下には恐らくイリス……だと思います。う~ん、その他の方はアトリビュートがないので、分からなかったです。

 

 ギリシア神話関連はマルカントニオ・ライモンディさんと言う方の作品が多かったです。なんかちょっと記憶にある名前だなぁと思ったら2011年「ウィリアム・ブレイク版画展」の「クォス・エゴ(波を鎮めるネプトゥヌス)」の作者の方でした。

 

 当時のレポートはこちらになりますが、この美術展でも同じ作品が展示されていますので、この部分を抜粋すると、

 

-----≪レポート抜粋≫-----

 まず最初の「クォス・エゴ(波を鎮めるネプトゥヌス)」の題名の「クォス・エゴ」ってなんだろ?とググッてみるとどうやらラテン語で、

 

 ウェルギリウス『アエネーイス』第一巻135行目の句

 

 との事( http://ibuki.ha.shotoku.ac.jp/~hisano/fegj%20qr.html 参照)です。

 

 ラテン語は全然分りませんが、原文を見ると確かに「Quos Ego」の記述があります( http://aeneis.net/?p=664 参照)。

 

 このシーンは『アエネーイス』の冒頭でイタリアを目指しているアエネーアース(トロイアの英雄)をユーノー女神(トロイアを憎みギリシアに味方する。トロイアのパリスが「一番美しい女神へ」の林檎をくれなかったから)が、風を司るアエオルスに命じて暴風雨を起こさせますが、海上はネプトゥーヌスの領域。

 自分の領域を勝手に荒らされたのではネプトゥーヌスも黙ってはいられません。そこで風を叱りつけますが、そのシーンのようです。

 

 泉井久之助訳「アエネーイス(上)」(岩波文庫)を見てみると、

 

 かかる輩(やから)をわしは今-。いやそれよりも当面に、なすべきことは大波をおさめることじゃ、そのあとで、例なき罰で汝らの、犯した罪を償(つぐな)わそう(P22抜粋)。

 

 とあります。この冒頭の「かかる輩(やから)をわしは今-。」が「クォス・エゴ」のようです。ジェイムズ・ホール著「西洋美術解読事典」のネプトゥヌスの項目を見てみると、

 

〔2〕波を鎮めるネプトゥヌス;ネプトゥヌスの怒り;「クォス・エゴ(お前たちを私は)」<略>「クォス・エゴ(Quos Ego お前たちを私は)」というのは、風を罰そうとしてネプトゥヌスが言いかけた脅しの言葉。「不敵な風、お前たちを私は〔片づけてしまおう〕」(p249-250)。

 

 とのこと。ネプトゥヌスのテーマとして2番目の例で書かれているということは、絵画の世界ではこの「クォス・エゴ」結構、有名なテーマなのかもしれません。

-----≪レポート抜粋≫-----

 

 とありました。この時はキャプション等の説明がなく苦労しましたが、今回の図録(p144)には説明が書かれています。

 

 「三美神にプシュケを示すアモル」は三美神とアモル(エロース)が描かれています。題名に書かれているアモルの妻プシュケは描かれていません。図録によると天上にいるシーンのようでアモルは下を指差していますので、下界にプシュケがいる、という想定のようです。

 題名にも書かれていて、物語的にも主役のプシュケが描かれていないというのは面白いですね(この物語を知らない方は「プシュケってどんな人なんだろ」とちょっとモヤモヤしそう……)。

 

 「壁龕のアポロ」は作品の良い悪いではなく漢字が読めませんでした……「へきがん」と読むそうです。英語では「niche」で「ニッチな市場」とかと同じだそうです。

 

 最後にジョヴァンニ・ダ・カステルボロニェーズさんの「アポロとマルシュアス」という彫玉(良く分かりませんがカメオみたいな感じでした)が気になりました。

 「アポロとマルシュアス」という題名を見た時、「生皮を剥がれているシーン」を思い浮かべましたが、観るとまだ楽器競争前またはマルシュアスの演奏のシーンのようです。

 

 左側にアポロン神と竪琴、右側に笛を吹くマルシュアス、パッと見、静かなシーンです。ただこの後、生皮を剥がされる事を考えると、アクセサリーのような物に何故このシーンをわざわざ選んだのか、ちょっと気になりますね……。


 ギリシア神話関連は「ガラテイアの凱旋」だけかなぁと思っていた所、思いのほか11点もあり、予想外に楽しめました。

 

 混んでいたとは言えBunkamura ザ・ミュージアムの「ルーベンス」展の方が混んでいるのは、やはりルーベンスの方が一般の人でも知っている(ネームバリュー)からですかね。素人の自分が見ても、ラファエロの方が「玄人向け」のような気がしました。

 ポストカード入れはオリジナルで力が入っています。同時期の美術展的にライバル(?)の「ルーベンス展」は「赤」がイメージでこちらは「青」。共にイニシャルは「R」というのは何か良い感じですね。

【購入グッズ】


図録 \2800

 

ポストカード

 マルコ・デンテ 「ガラテイアの凱旋」 \100

 マルカントニオ・ライモンディ 「パルナッソス山上のアポロ」 \100

 ジョルジョ・ギージ 「アテナイの学堂」 \100

 ラファエロ・サンツィオ 「自画像」 \100

 

 ミニ図録(\1200)は可愛く欲しかったのですが、普通の図録が\2800と高かったので断念。もしあのサイズで同じ情報量だったら、間違いなくミニ図録を買っていたと思います。

【ギリシア神話の絵画とポストカード】

No 作者名 作品名 ポストカード
1 ラファエロの工房
プットーとグリフォンを表したフリーズ
×
2 マルカントニオ・ライモンディ
壁龕のアポロ
×
3 マルカントニオ・ライモンディ パルナッソス山上のアポロ
4 ラファエロ・サンツィオ ムーサの頭部 ×
5 マルコ・デンテ バラの棘を抜くヴィーナス ×
6 マルカントニオ・ライモンディ パリスの審判 ×
7 マルカントニオ・ライモンディ クォス・エゴ(波を鎮めるネプトゥヌス) ×
8 マルカントニオ・ライモンディ 三美神にプシュケを示すアモル ×
9 マルコ・デンテ ガラテイアの凱旋
10 ジョヴァンニ・ダ・カステルボロニェーズ アポロとマルシュアス ×
11 マルコ・デンテ ≪ガラテイアの凱旋≫の描かれた水盤 ×