ヨーロッパ絵画の400年 ウィーン美術アカデミー名品展

Gemaldegalerie der Akademic der bildenden Kunste Wien

損保ジャパン東郷青児美術館

20060916-20061112

No:0014_0001

ウルカヌスに捕えられたマルスとヴィーナス

Mars und Venus von Vulkan gefangen

ルーカ・ジョルダーノ

油彩・カンヴァス、232×182cm(Oil on Canvas 232×182cm)

1670/75年頃(c.1670/75)

ウィーン美術大学絵画館(Academy of Fine Arts Vienna)

【絵画の中のギリシア神話】 アレスとアフロディテの話

 アレスは軍神、アフロディテは愛と美の女神で、共にオリュンポス12神と呼ばれる主要な神様の一員です。ギリシア神話とローマ神話の違いにより、アレスはマーズ、マルスとも呼ばれ、アフロディテはヴィーナス、ウェヌスとも呼ばれます。

 

 ヴィーナスという呼び名は一般的に知られていますが、アレスはその有名なヴィーナスの浮気相手として有名です。アレスに妻はいませんが、アフロディテには夫のヘパイストス(ウルカヌスとも呼ばれます)という鍛冶の神がいますので、この2神の関係は「浮気」になります。

 この2神、結構仲が良く「トロイの木馬」で有名なトロイア戦争の時も二人してトロイア側についていました。

 

 実はアレスについての物語はこの「アフロディテとの浮気」と「トロイア戦争で人間に負けた」の2つでほとんどになります。軍神アレスの如く、とか比喩としては良く出てきますが、物語的には少ないですね。

 

 ちょっと話は逸れますが、アレスが人間(ディオメデスという英雄です)に負けた、というのはディオメデスに女神アテナがついていたからで、純粋に負けた訳ではありません(流石に神様ですからねぇ、人間には負けません。アテナさんに負けたのであれば納得できますね)。

 

 さて、アレスとアフロディテの浮気ですが、夫のヘパイストスにバレて手酷い仕打ちを受けます。ホメロス 著/松平千秋 訳「オデュッセイア(上)」(岩波文庫)の「第八歌 オデュッセウスとパイエケス人との交歓」には、

 

 ふたりの神は床に入って横になったが、忽ちふたりの体には、名匠ヘパイストスが巧妙に作り上げた網がまつわりついて、手足を動かすことも挙げることもままならぬ。この時ふたりは、もはや逃れる術のないことを悟ったが、一方両脚の曲がった高名の神は、レムノスの地に着く前に、とって返してふたりの神に近付いてきた(p202抜粋)。

 

 とあります。この後、網に捕まったままの姿を他の神々に晒され、笑い者にされますが、(「パーシージャクソンとオリンポスの神々」で有名になりそうな)海神ポセイドンのとりなしにより、ようやく2神は解放されます。

 

 因みに「両脚の曲がった高名の神」とはヘパイストスの事で、イリアスでは「足萎えの神」とか書かれています。足が不自由になったのは、生まれた時に母親の女神ヘラに「醜い」という事で天上から落とされたからです(虐待ですね……更に可哀想な事に、和解したヘラに味方してゼウスと言い争いをした際、今度はゼウスに天上から落とされています)。

 

 この絵画は青字部分を描いた物と思います。カタログには、

 

 寝床を覆い隠していたカーテンは引き上げられ、優しく睦み合っていた二人は驚いて飛び起き、オリュンポスの神々--その先頭には稲妻の束を振りかざすユピテルがいる--の視線に晒されていることに気付いておののいている(カタログp155抜粋)。

 

 とあります。捕まった二人を見る為に男神は集まってきましたが、女神は集まらなかった、とオデュッセイアでは詠われていますので、女神は描かれていないようです。

 

 個人的にはゼウス(ユピテル)の位置、鷲が描かれている所にポセイドンが描かれていたら、とちょっと思いました。まぁ大神ゼウスを差し置いてポセイドンを描く訳にはいかなかったのかもしれませんね。


No:0014_0002

ヘラクレスとアンタイオスの闘い

Der Kampf des Herkules mit Antaus

ルーカス・クラナハ(父)

テンペラ・板(オーク)、39×26.5cm(Tempera/Holz(Eiche) 39×26.5cm)

1530年頃(c.1530)

ウィーン美術大学絵画館(Academy of Fine Arts Vienna)

 

 

No:0014_0003

三美神

The Three Graces

ピーテル・パウル・リュベンス

油彩・板、119×99cm(Oil on Canvas 119×99cm)

1620-24年頃(c.1620-24)

ウィーン美術大学絵画館(Academy of Fine Arts Vienna)

 

 

No:0014_0004

アドニスの装いの少年の肖像

Bildnis eines kleinen Jungen als Adonis

ニコラース・マース

油彩・カンヴァス、72.8×63cm(Oil on Canvas 72.8×63cm)

1670年頃(c.1670)

ウィーン美術大学絵画館(Academy of Fine Arts Vienna)

 幼いこの子供は、「ロリカ」と呼ばれるローマ時代の防護服のような華やかな衣装に身を包んでおり、ディアナの神話的世界の中で、狩に出る幼いアドニスになりきっている(カタログp162抜粋)。